OVERSEAS TRAVEL ACCCIDENT INSURANCE
 
はじめに
個人の保険ということでは、この興味あるテーマに触れないわけにはいきませんね。でも、法律や生活環境が異なる国の保険を比べるのは容易ではありません。

実際、日本で取り扱われている「海外旅行者傷害保険」あるいはその変形版の「海外駐在員総合保険」は、アメリカで一般に普及している保険の各部分を一つにまとめたような保険です。ですから、逆に言えばアメリカにはこの保険と同種の保険はありません。一般に普及している保険を持っていれば、大方のアメリカ人にとってはこの特別な保険を持つ必要が無いとも言えるでしょう。

近い種類のアメリカの保険ということでは、企業単位で契約する「団体旅行傷害保険」や空港のカウンターや自販機で売られている「個人旅行傷害保険」ですが、これらは事故による死亡・後遺症 Accidental Death & Dismemberment (AD&D)と呼ばれる部分だけですから、日本の海外旅行者総合保険のようにまとまった総合的なカバーを提供しているわけではありません。

最近は保険会社の競争によってかなりアップグレードされ、中身の点では一見便利そうな海外旅行者総合保険ですが、アメリカで使おうとする時に本当に問題は無いのでしょうか?

海外旅行者総合保険とアメリカの一般的保険の対比
では、まず頭を整理する上で、一般的な海外旅行者総合保険とアメリカの保険との対応をしてみましょう。
日本の海外旅行者総合保険 対応するアメリカの保険 参 考
傷 害 保 険 (基本契約)
死亡
\1,000万 − \5,000万
生命保険
(企業団体あるいは個人)
$10,000から$500,000程度までいろい
Life Insurance - AD&D
後遺障害
上記傷害死亡保険金に含まれる
生命保険
(企業団体あるいは個人)
$10,000から$500,000程度までいろいろ
Life Insurance - AD&D
治療費用
\600万 - \1,000万
医療保険
(企業団体あるいは個人)
とりあえず立替ることになるが、アメリカに戻ってから保険会社に請求できる。
$2,000,000 生涯限度額
Medical/Health Insurance
傷害、つまり事故によるケガという点では、設定できる保険金額は別にしてそれほど大きな差は無いようです。また、現時点では、海外旅行者総合保険はテロリズムによる傷害をカバーします。
疾 病 保 険 (オプション)
死亡
\1,000万 - \3,000万
生命保険
(企業団体あるいは個人)
Life Insurance
治療費用
\600万 - \1,000万
医療保険
(企業団体あるいは個人)
とりあえず立替ることになるが、アメリカに戻ってから保険会社に請求できる。
Medical/Health Insurance
or
HMO Plans
(該当する保険は無い。ただし傷害で歯が折れたような場合には傷害治療でカバーできる。) 歯科保険
(企業団体あるいは個人)
Dental Insurance
疾病、つまりケガではない普通の病気の範囲では少し事情が違ってきます。まず、海外旅行者総合保険では歯科治療は保険でカバーできません。またカリフォルニア州の場合、州の法律によって妊娠出産も通常の病気として医療保険でカバーされる一方、海外旅行者総合保険ではカバーされません。特に大きな違いは、海外旅行者総合保険の性質上、既に罹っている病気持病Pre-existing Conditionsは一切カバーされない上、1つの病気やケガの治療は発生から180日を限度としていることです。
損 害 保 険 (オプション)

携行品・生活用動産
\60万程度 \3,000
免責額宿泊施設にある間と旅行中持って歩いている間の個人の携行品への損害をカバーする。現金など特定の物品は保険でカバーしない。

住宅総合保険
の中の火災・物件(物)保険最低$20,000から
Homeowner/Renter
Insurance - Property
賠償責任特約
1発生\5,000万
居住・宿泊施設の利用から発生する賠償責任と旅行・生活用レンタル機器とホテル客室への損害をカバーする
住宅総合保険
の中の個人包括賠償責任保険および
個人アンブレラ賠償責任保険
1発生$300,000に加えてアンブレラの1発生$1,000,000
Homeowner/Renter
Insurance - Comprehensive Personal Liability (CPL), PLUS Personal Umbrella Liability Insurance
家族総合賠償責任
訪問者のコートなど預かった物品での損害をカバーする。
住宅総合保険
の中の個人包括賠償責任保険および1発生$300,000
Homeowner/Renter
Insurance - Comprehensive Personal Liability (CPL)
被害者治療費用
救急車や緊急治療センターなど訴訟防止のため被害者の治療にかかった費用をカバー
住宅総合保険
の中の個人包括賠償責任保険に含まれる緊急医療費補償1人$1,000
Homeowner/Renter
Insurance - Medical Payments in Comprehensive Personal Liability (CPL)
個人包括賠償責任または
自動車運転者賠償責任

指定商業レンタカーを借りて事故を起こしたときの対人・対物事故について、賠償金をカバー。1事故対人\1億・対物\500万限度
個人自動車保険
の中の自動車対人・対物損害賠償責任および
個人アンブレラ賠償責任保険
1事故$300,000からに$500,000に加えてアンブレラの1発生$1,000,000
Personal Automobile
Insurance - Hired Automobile Liability, PLUS
Personal Umbrella Liability Insurance
(該当する保険は無い) 住宅総合保険
の中のベビーシッターやお手伝いさんなどの就業中の傷病をカバーする労災保険
Homeowner/Renter
Insurance - Workers' Compensation
損害保険部分では、「宿泊施設」ではなく自宅やアパートなど「居住施設」にある携行品には保険が適用されない点に注意したいですね。「居住施設」にある間もカバーしたいのであれば、「海外駐在員特約」を契約する必要がありそうです。落とし穴がもう一つあります。アメリカの住宅総合保険に含まれている賠償責任保険は、保険会社があなたに代わって賠償金を支払うだけでなく、相手被害者に対応をするため弁護士など法務費用もカバーします。しかし、海外旅行者総合保険では法律上の問題から賠償金は支払うものの、保険会社による「契約者防衛機能」が無いこともあり、弁護士費用などの法務費用は全て契約者持ちになることがあります。詳しくはご自分の海外旅行保険の保険会社にご確認ください。
尚、アメリカの住宅総合保険Homeowners/Renters Insuranceに含まれている賠償責任保険とほぼ同様の効力を持たせるには、日本の海外旅行者総合保険に「賠償責任特約」と「家族総合賠償責任」の2つを必ず契約する必要がありそうです。
特 殊 損 害 保 険 (オプション)
救援者費用
航空機寄託手荷物遅延
航空機遅延費用
旅行変更費用
航空機遅延等費用
(該当するアメリカの保険は無い)  
     
この部分は、海外旅行者に必要とされるユニークで特殊な保険内容なので、アメリカの一般的には含まれていません。
アメリカの生活環境と海外旅行者総合保険の問題点
以上のように見てみると、一番の問題はアメリカの医療保険にある部分です。比較的生活水準が低く、そのため医療費も安い国々への旅行であれば問題が無くても、アメリカのように医療費がとても高い地域でこの保険が本当に有効かどうかは疑問が残ります。

私達が経験した中には、こんなクレームの事例もあります。

1995年11月の感謝祭休暇のこと、日本人旅行者はビバリー・ヒルズで道路を横断時に転倒し、近隣の有名なシーダース・サイナイ病院に担ぎ込まれました。
検査の結果は複雑骨折で約3週間ほど入院し、おもりを付けて脚を伸ばす治療を受けなくてはなりませんでした。この旅行者の「傷害治療」の保険は、当時200万円で契約されていましたが、入院7日目にして既に保険の支払限度額を超え、以降現金で毎日支払うよう要求される結果になりました。
ビバリー・ヒルズという場所柄もありますが、実はアメリカでの治療費をまかなうには海外旅行者総合保険の限度額はいささか心細いものなんです。幸いこの旅行者の勤務先がロスアンジェルス市内に現地法人を持っていたため、日本から連絡を受けた現地法人がとりあえず数万ドル弱の現金を立て替えて病院に支払い、旅行者は治療半ばでなんとか退院して日本に帰国できました。
ケガであれば、状況次第で帰国することも出来るでしょうが、重い病気であれば航空会社も搭乗を拒否するでしょう。帰国も出来ず保険の限度額を超える入院・治療費が毎日かさんで行く。想像しただけで怖いですよね。

次に問題になるのが、アメリカでクレームとなりやすい賠償責任事故です。

訴訟社会のアメリカでは、本当に法廷で争そわないで示談となるものがほとんどですが、それでもけっこうまとまった金額の賠償金をムシリとられる上に、対応のために雇い入れる弁護士の費用がかなりかかります。統計によれば、支払った賠償金1ドルについて掛かる弁護士費用は3ドルから4ドルです。つまり、弁護士費用を3〜4ドル掛けるから相手に払う賠償金が1ドルで済むわけですね。

ですから、アメリカの住宅総合保険であれ自動車保険であれ、賠償責任保険の部分は必ず「保険会社の防衛義務」つまり保険会社が弁護士費用を負担してくれるという規定が入っています。ところが、日本の海外旅行者総合保険の賠償責任保険部分では、保険会社によっては雇い入れた弁護士費用をカバーしないということもあるようです。その場合には弁護士が相手との示談交渉を行ない、最終的な賠償額を保険会社が承認し、保険会社が被害者に直接賠償金を支払います。そして、弁護士は保険の契約者であるあなたに直接費用を請求します。これが全部あなたの負担になります。因みに弁護士費用は時間あたり大体250〜300ドルで、ちょっとしたクレームでも10時間程度は必ずかかります。本当にこれを自分で負担しますか?

こんなことを言っては海外旅行者保険を開発した日本の保険会社の皆さんには悪いのですが、アメリカの事情だけで考えると、どうも安心できる保険とは思えない、というのが私達の職業から来る実感だと言って置きましょう。アメリカのように社会環境にあった保険がすでにある国では、やはりその地の保険が望ましいと思います。

 
 
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