NO-FAULT SYSTEM AND
  PERSONAL INJURY PROTECTION (PIP)
 

ときどき、カリフォルニア以外の特定の州にお住まいの皆さんから、個人自動車保険に含まれているPIPあるいはPersonal Injury Protectionという保険カバーについてご質問をいただきます。たしかに、MY保険の自動車保険の説明にもPIPと言うのは出て来ませんね。ここでは法律の話をちょっとだけ絡めながら、皆さんにご説明しましょう。

 
州ごとに異なるシステム
最初に基本となる法律的な部分を理解しておきましょう。簡単に言うとアメリカには大きく分けて2つのシステムがあります。

まず、第1のシステムは、被害者が責任ある加害者やその保険会社から損害を回収する方式です。このシステムはカリフォルニアなど全米37の州で採用されており、「Third-Party System 対加害者賠償請求制度」と呼ばれています。この制度では、自分に過失が有り相手被害者に賠償する責任がある場合に限って自分の保険会社は対応します。ですから、自分が被害者であった場合には、相手やその保険会社に対して直接クレームするか、あるいは自分の弁護士に交渉を一任することになります。(図中 @)

 
第2のシステムは、過失の有無を直接問題にせず、誰に過失や責任があろうと自分の保険からクレームを回収するという方式です。これはニュージャージーを発祥の地とする「No-Fault System 無過失給付制度」と呼ばれます。

この制度を採用している州では、被害者側の死亡や重度の後遺症など特定の状況に限って相手加害者を訴追することが許されています。そして、実際の治療費など損害実額以上の慰謝料Pain & Sufferingも請求して良いことになっています。逆に言えば、死亡や後遺症など法律で定められた特定の要因が無ければ、慰謝料の名目で損害実費以外の賠償金を取るために相手を訴えることは出来ません。(図中 @)そして同様に、死亡や後遺症など特定の環境や特定金額以上の大口損害に至らなければ、クレームを支払った自分の保険会社が相手の保険会社に求償することも認められていません。(図中A)因みに、True No-Fault州と言われる14州の中で、対加害者賠償請求ができるかどうかの判断に「負傷程度基準」Verbal Thresholdを採用しているのは、フロリダ・ミシガン・ニュージャージー・ニューヨーク・ペンシルバニアの5州で、残りの州では「損害金額基準」Monetary Thresholdが採用されており、平均的には$25,000程度となっています。

また、事故の相手の車が同じ「無過失給付制度」を採る州の車であれば良いですが、必ずしもそうとは限りません。例えばカリフォルニアの車が旅行中のニューヨークで事故にあった場合、カリフォルニアの運転者はニューヨークの運転者に対して「対加害者賠償請求制度」に基づいてクレーム請求することも出来るからです。死亡・後遺症といった重大事故と対加害者賠償請求制度に基づく相手からのクレームの可能性があるため、たとえ無過失給付制度を採る州でもやはり自動車対人・対物損害賠償責任保険はしっかり手配することが大切ですね。

 
Personal Injury Protection (PIP)とは

さて、法律的な基本をご理解いただけたでしょうか?

無過失給付制度を採用する州の個人自動車保険には、一般に「法定無過失給付保険」Personal Injury Protection (PIPと略す)の付帯が義務付けられ、さらにオプションで「追加無過失給付保険」Additional PIPが準備されていることもあります。

これらの保険では、もし「対加害者賠償請求制度」を採用していたと仮定すれば、相手加害者の自動車損害賠償責任保険Automobile Liabilityの対人賠償Bodily Injuryから払われるであろうクレームが払われることになります。実際の治療費Medical Expensesだけでなく、仕事を休むことによる賃金カットなど休業補償Lost Wages(実際の賃金の60〜70%程度)、そしてリハビリ費用Rehabilitationや乳児の面倒を見る母親が入院治療中であればベビーシッターの費用など代替サービス費用Replacement Servicesも保険の対象になります。

その意味では、単に治療・入院費あるいは死亡時の葬儀費用だけをカバーする搭乗者傷害保険Medical Paymentsよりもカバーの範囲がぐっと広いと言えるでしょう。もちろん、最高支払限度額や補償の範囲内容は州によって全く違いますから、詳細をお知りになりたければ、ご自分の州のDMVや保険庁のサイトをご覧ください。

州として厳格に無過失給付制度は採っていないものの、オプションとしてPersonal Injury Protection保険を一般的な搭乗者傷害保険Medical Paymentsの代わりに選択できる州もあるようです。例えば北西部のワシントン州などは、州法で明確に無過失給付制度を採用しているわけではありませんが、この州で発行される自動車保険には実際PIPが付帯されることが一般的です。従って、これらの州では搭乗者傷害保険Medical ExpensesかPIPかの選択の余地があると考えられます。

多くの場合、このPIPは便利な保険であり、オプションで手配できるならばしたいところです。ただ、既に実社会から引退していて固定の社会補償年金を受給しているような皆さんなら、例え事故に遭っても所得補償の問題は発生しないと考えられます。その場合にはPIPよりもむしろコストの安い搭乗者傷害Medical Expensesを選択する方が良いかもしれません。

 
車両保険と無過失給付制度
以上は、自動車賠償責任の中の「対人事故」Bodily Injuryに関する部分です。ただ、実際事故に遭った時自分が歩行者でもなければ、当然車体にも損害が出ているはずです。いわゆる車両保険Collision & Comprehensive Physical Damageが手配されていれば、この部分の処理は対加害者賠償請求制度の州であろうと無過失給付制度の州であろうと、処理は基本的に同じになります。つまり、衝突という車体損害Property Damageは、無過失給付制度の対象には含まれていないということです。

但し、唯一ミシガン州だけは、車体損害も無過失給付制度の中に組み込んでいるので、前述の身体障害Bodily Injuryに関わる処理と同じになります。その場合には、車体保険の免責額Deductibleを本来相手から回収できるにもかかわらず、無過失給付制度のため自分で負担しなくてはならなくなります、そのため、ミシガン州では免責額が免除される特約Broad Form Collision Endorsementが一般的に適用されます。

手続きの流れとしては、自分の保険会社にクレームを申請して(図中 @)、クレームを支払った保険会社は相手加害者とその保険会社に求償Subrogationします。(図中 A)つまり、無過失給付制度の州に住んでいて車両保険を持っている場合には、死亡・後遺症といった重大事故でない限り、自分が連絡する相手は常に自分の保険会社に一本化できるということですね。

 
PIP保険の意味と価値
以上のように、無過失給付制度とそれを代表するPIP保険は、自動車保険契約者にとってクレーム処理上の大きな利点を持っています。また、自動車保険の無過失給付制度は、「対加害者賠償請求制度」での弁護士の介在による相手加害者・保険会社への過剰なクレーム請求を抑止し、保険クレーム総額を軽減し、よって契約者が支払う自動車保険料の上昇をできるだけ抑えるという機能を持つと言われています。ですから自動車保険の点では、「無過失給付制度」の州にお住まいの皆さんは大変幸運だと言えるかもしれません。
 
各州の強制PIP保険の状況
それでは、最後に各州の対人・対物賠償責任の最低保険限度額と、強制PIP保険の状況を一覧表でご覧ください。皆さんの州は「対加害者賠償請求制度」の州でしょうか?それとも「無過失給付制度」の州でしょうか?

州法で義務となっている保険の欄にPersonal Injury Protectionと記載されている州では、PIP保険が必ず保険に付帯されるということですから、その州は「無過失給付制度」を採用していることになります。


State
州法で義務となっている保険の種類
Type(s) of Coverage Required
対人対物
最低限度額*
Minimum Liability Limits*
 
AL
Bodily Injury and Property Damage Liability (effective 6/2000)
20/40/10
 
AK
Bodily Injury and Property Damage Liability
50/100/25
 
AZ
Bodily Injury and Property Damage Liability
15/30/10
MY保険営業州
CA
Bodily Injury and Property Damage Liability
15/30/5
MY保険営業州
CO
Bodily Injury and Property Damage Liability
25/50/15
MY保険営業州
CT
Bodily Injury and Property Damage Liability, Uninsured and Underinsured Motorist
20/40/10
 
DE
Bodily Injury and Property Damage Liability, Personal Injury Protection
15/30/5
 
DC
Bodily Injury and Property Damage Liability, Uninsured Motorist
25/50/10
 
FL
Property Damage Liability, Personal Injury Protection
10/20/10
 
GA
Bodily Injury and Property Damage Liability
15/30/10
MY保険営業州
HI
Bodily Injury and Property Damage Liability, Personal Injury Protection
20/40/10
 
ID
Bodily Injury and Property Damage Liability
25/50/15
 
IL
Bodily Injury and Property Damage Liability, Uninsured Motorist
20/40/15
MY保険営業州
IN
Bodily Injury and Property Damage Liability
25/50/10
 
IA
Bodily Injury and Property Damage Liability
20/40/15
 
KS
Bodily Injury and Property Damage Liability, Personal Injury Protection, Uninsured Motorist
25/50/10
 
KY
Bodily Injury and Property Damage Liability, Personal Injury Protection
25/50/10
MY保険営業州
LA
Bodily Injury and Property Damage Liability
10/20/10
 
ME
Bodily Injury and Property Damage Liability, Uninsured Motorist
50/100/25
 
MD
Bodily Injury and Property Damage Liability, Personal Injury Protection (may be waived for policyholder but compulsory for passengers), Uninsured Motorist
20/40/10
 
MA
Bodily Injury and Property Damage Liability, Personal Injury Protection, Uninsured Motorist
20/40/5
 
MI
Bodily Injury and Property Damage Liability, Personal Injury Protection
20/40/10
 
MN
Bodily Injury and Property Damage Liability, Personal Injury Protection, Uninsured and Underinsured Motorist
30/60/10
 
MS
Financial Responsibility Only
10/20/5
 
MO
Bodily Injury and Property Damage Liability, Underinsured Motorist
25/50/10
 
MT
Bodily Injury and Property Damage Liability
25/50/10
 
NE
Bodily Injury and Property Damage Liability
25/50/25
 
NV
Bodily Injury and Property Damage Liability
15/30/10
MY保険営業州
NH
Financial Responsibility Only
25/50/25
 
NJ
Bodily Injury and Property Damage Liability, Personal Injury Protection, Uninsured Motorist
15/30/5
MY保険営業州
NM
Bodily Injury and Property Damage Liability
25/50/10
MY保険営業州
NY
Bodily Injury and Property Damage Liability, Personal Injury Protection, Uninsured Motorist
25/50/10
MY保険営業州
NC
Bodily Injury and Property Damage Liability
25/50/15
MY保険営業州
ND
Bodily Injury and Property Damage Liability, Personal Injury Protection, Uninsured Motorist
25/50/25
 
OH
Bodily Injury and Property Damage Liability
12.5/25/7.5
 
OK
Bodily Injury and Property Damage Liability
10/20/10
 
OR
Bodily Injury and Property Damage Liability, Personal Injury Protection, Uninsured Motorist
25/50/10
MY保険営業州
PA
Bodily Injury and Property Damage Liability, Medical Payments
15/30/5
 
RI
Bodily Injury and Property Damage Liability, Uninsured Motorist
25/50/25
 
SC
Bodily Injury and Property Damage Liability, Uninsured Motorist
15/30/10
 
SD
Bodily Injury and Property Damage Liability, Uninsured Motorist
25/50/25
 
TN
Financial Responsibility Only
25/50/10
 
TX
Bodily Injury and Property Damage Liability
20/40/15
MY保険営業州
UT
Bodily Injury and Property Damage Liability, Personal Injury Protection
25/50/15
 
VT
Bodily Injury and Property Damage Liability, Uninsured and Underinsured Motorist
25/50/10
 
VA
Bodily Injury and Property Damage Liability, Uninsured Motorist
25/50/20
 
WA
Bodily Injury and Property Damage Liability
25/50/10
MY保険営業州
WV
Bodily Injury and Property Damage Liability, Uninsured Motorist
20/40/10
 
WI
Financial Responsibility Only, Uninsured Motorist
25/50/10
 
WY
Bodily Injury and Property Damage Liability
25/50/20
 
* 最初の数字は対人一人あたりの最低限度額、次の数字は対人一事故あたりの最低限度額、そして最後の数字は対物一事故の最低限度額になっています。これらの限度額は変更されることがあるので、最新の限度額は各州のDMVあるいは保険庁までご確認ください。
 
前にも書いた通り、「無過失給付制度」でのPIP保険の給付内容や限度額は州によって異なります。給付内容の詳細については、各州政府のウェッブ・サイトなど関連情報をご覧ください。また、各州の自動車対人対物賠償責任保険の最低限度額も頻繁に変更されたり、ごく特定の数州では「無過失給付制度」は個人自動車保険に限定され、企業所有の車両には適用しないという規定があります。以上ご注意をお願います。
 
 
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